蛍の庭

欽山の夏の風物詩は
蛍が見せる幽玄の光。
毎年初夏には当館庭園に
自然発生の蛍が姿を見せており、
年々増加しています。

蛍の庭
秋冬
軒しろき月の光に山影の
闇をしたひてゆく蛍かな
ホタルの飼育のために、平成9年春に環境に配慮したビオトープ型造園により、庭園を改修造園しました。
ただ単に、どこかに生息しているほたるを捕獲してきて放つのとは異なり、ほたるを飼育して庭園に放流し、
ほたるの育成可能な環境を施した庭園で、ほたるの自然発生を試みました。
お陰様で平成10年には、自然発生のほたるが姿を見せ、年々数を増しています。

欽山のお庭で蛍観賞

毎年6月初旬~中旬の午後8時より、1階庭園にて蛍をご鑑賞いただけます。
手が届きそうなほど間近にふわりふわりと幽玄の光が飛び交う庭園で夜のお散歩。

ポイント 1

自然発生の蛍が見れます。

自然発生の蛍を当館の庭で見ることができます。

ポイント 2

当館から外出せずに蛍が見れます。

当館より外出の必要無しだから、遠方に行く必要がない。

ポイント 3

庭園内で蛍との距離が近い。

庭園内だから、蛍との距離が近く、触れられる。

「ほたるの夕べ」期間中は夜20:00よりライトダウンを行います。
ご夕食後には是非浴衣でお庭へお出ましいただき、初夏の宵を彩る蛍をごゆっくりお楽しみください。

※当館庭園中央の池に掛かる橋付近で一番よく蛍をご覧いただけます。

ほたる豆知識

ほたるの一生は?
蛍は、幼虫からさなぎの時期をへて成虫になります。
日本に住むゲンジボタルやヘイケボタルは、
幼虫のとき水の中で過ごしますが
これは世界でも珍しいケース。
幼虫は「カワニナ」という貝を食べて育ちますが、
カワニナは汚染された水にはいないため、
日本の蛍が生きるためにはきれいな河川が必要だといえます。

約1年の幼虫期を過ごした後、
成虫として華々しく活動できるのはわずか1週間程度。
この期間、何も食べずに飛び回ります。
ほたるの一生は?
なぜ光るの?
蛍の光は、プロポーズの合図。オスは光を放ち飛びながらメスを探し、
メスは葉の上でじっとオスを待ちます。
オスは尾節から数えて2つ目と3つ目が光りますが、
メスが光るのはそのうちの1節のみ。
そのため、オスの方が強く光るように見えます。
ちなみに、蛍の種類のうちほとんどが、昼間活動して光らないタイプ。
昼間活動する蛍は、光のかわりに匂いを出して、
プロポーズの交信をしています。
蛍の光、オスとメスの違い。
蛍の光はプロポーズの合図。
ゲンジボタルについて
青森~九州まで、流水域に生息。
ヘイケボタルと並んで、日本でよく見られます。
名前の由来は諸説ありますが、
ゲンジの方がヘイケよりも強く光ることから、
繁栄する源氏と没落する平家になぞらえたという説が有力です。
特徴
大きさ 約15~17mm
色・形 胸の部分が淡い紅色で、黒い十字紋がある
光り方 オスは飛びながら2~4秒ごとに点滅。
メスはほとんど飛ばず光も弱い

書籍での紹介

ホタルのためのビオトープ造園
当館の「ホタルのためのビオトープ造園」が、
アジアにおけるビジネス事例を研究・紹介する、
The Asian Business Center にて取り上げられ、同センターより出版された
Exploring Best Practices in the Hospitality Industry in Asia
という書籍で紹介されました。
Exploring Best Practices in the Hospitality Industry in Asia
宿泊施設
欽山は、日本旅館の伝統を汲むクラシック・スタイルな宿泊施設で、
日本最古の温泉地である有馬にあります。
背景・目的
この旅館が重視していることは、茶の湯の心で表される繊細なおもてなしを
お客様にお届けすることです。
ゆえに、旅館の雰囲気は「侘び」(簡潔さと静けさの美)と「寂び」(寂しさと静寂さの美)に満ちています。お客様は温泉や季節の微妙な移ろいを楽しまれるために来館されます。
あるお客様が、欽山の庭でホタルを鑑賞できたらすばらしい、とおっしゃられたことがきっかけで、
常務取締役の小山嘉昭氏は、庭園でホタルを飼育する可能性を考え始めました。
当地域のホタルの飛ぶ時期は6月初頃から中頃ですが、
この時期はちょうど客室稼働率のオフシーズンにあたります。
ホタル鑑賞が旅館の新たな吸引力となり、この期間の客室稼働率が改善される可能性がありました。
実践事例
欽山の経営陣は、ホタルを飼育・繁殖できる良質な環境の保全、再生、造成のために、
庭園をビオトープ型に改修しました。
庭園での夜間のホタル鑑賞が独特の雰囲気を醸し出すことができたため、
その環境の維持に努めました。
客室稼働率が低調であった時期がホタルが飛ぶ時期が重なったおかげで、
今では多くのお客様がホタルを求めて旅館を訪れるようになりました。
実践経緯
小山氏はホタルの飼育について徹底的な調査をしました。
小山氏は造園業者や自然保護協会(欽山のある兵庫県の自然保護協会)とも相談しました。
新しい知識を得て、小山氏は2001年4月に旅館の庭園の改修に着手しました。
ホタルの飼育のために人工河川の護岸および他の改修工事がおこなわれました。
最初の年、2001年には数匹が交尾し産卵しました。
水路では卵が孵化し、幼虫となり、サナギに成長しました。
羽化し成虫となったホタルは庭園内で過ごすことがわかりました。
欽山ではそれ以来毎年ホタルを鑑賞することができ、その数は年々増えています。
欽山はビオトープ型庭園の造成に成功し、ホタルに適した生息地となりました。
成果
旅館の経営面では、ホタルがオフシーズンをオンシーズンに変えました。
6月初頃から中頃にかけて、夜空に乱舞するホタルを鑑賞するために、
多くのお客様が欽山へいらっしゃるようになりました。
ビオトープ型庭園造成以来、ホタルは欽山の呼び物となりました。
考察
欽山の庭園がたまたまホタルの飼育に理想的な環境にあったため、比較的低コストで成功できました。

しかしながら小山氏は次のように強調します。

『今後、自然環境の変化に遭遇することがあるでしょう。
もしホタルが何らかの影響で生育しなかったら、ホタル鑑賞を目的に来館されたお客様を結果的に裏切ることになるなどのリスクがあると思います。
しかし、もっとも大切なことは、まず行動を起こすことです。
ホタルの飼育はお客様の一言を実現しようと行動を起した結果だったからです。』
The Asian Business Case Centre